介護の現場で避けて通れない問題のひとつに認知症があります。
高齢者がますます増える社会という意味でも、認知症は社会的キーワードになっています。
認知症についてはすでに多くの研究がなされ、多くの識者も語っている――にもかかわらず、
“よくワカラナイ”との声を、しばしば耳にします。
たとえば医学・医療の立場では「認知症は、脳の病気のひとつである」との認識があります。
一方、介護の世界では「認知症を脳の病気とする見方には違和感がある。
お年寄りにみられる認知症は、老いをめぐる人間の変化・人間的反応ととらえるべきではないか。
脳の病変と症状発現は個別差があり、必ずしも一対一の対応をしていない。
脳の病気と断定してしまうのは危険。人間のような呆けかたをするのは他の動物にはない」
とする意見(三好春樹氏など)があります。
これは円柱を上から見れば円に見え、横からみれば長方形に見えるという
角度の問題だろうと氏も語っていますが、それでもなお相容れない解釈が、
現場に漂っているような気がします。
現場とは、たとえば医療と介護の現場であり、医療と看護の現場であり、介護と看護の現場です。
ともあれ、介護・看護・医療が混在している施設であれば、
認知症に対する一定の見解は、ないよりあったほうが望ましいでしょう。
それを軸にカンファレンスが行われ、個々の対応策が検討されるからです。