浜辺の診療室から

暮らしの環境   認知症をめぐって(その7)

脱水症が治ったのに、なぜ家に戻れないのか。

骨折の手当をしてリハビリも順調にいっていたようなのに、どうして退院できないのか。

若く健康な方は、そう思うかもしれません。

 

理由は、帰るにふさわしい場がないからです。

医師が 「 退院可能。帰っていいですよ 」 といっても、

看護師やソーシャルワーカーたちは 「 ノー 」 というでしょう。

戻ろうとする場所が、入院する前と何も変わっていない環境であれば、

また入院してくる可能性が高いと考えるからです。

 

食べたくなかったから食べなかった。だから脱水になった、という単純なストーリー。

でも、食べたくなかったから、そのまま寝ていた。

あるいは、知ってはいたが寝かせておいた、のであれば、再発します。

前者は独居老人に多く、後者は家庭で孤立していた老人に多くみられます。

 

骨がもろかったせいか、ちょっとつまずいたら転倒して骨折した。

これもストーリーとしては単純です。

でも、トイレに行くまでにいくつも段差があったり、

居住空間がゴミに囲まれて足の踏み場がないのであれば、早晩転倒するでしょう。

これも、独居や孤立状態に置かれた老人に多いパターンです。

 

暮らすのにふさわしい社会的環境が整っていないために、行き場を失った高齢者たち。

そうした例が退院したあと戻るところは、さしあたり家以外の場です。

継続医療が必要であるなら療養型病院へ、そうでなければ老健 ( 介護老人保健施設 )、

特養 ( 介護老人福祉施設 )、グループホーム、有料介護施設といった場が検討されます。

 

けれども戻った家でふたたび暮らせるか暮らせないかは、ひとつの見解です。

退院先をめぐって意見が分かれることも、ままあります。

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