浜辺の診療室から

解放される場としての施設   認知症をめぐって(その9)

上司と部下の関係に限らず、感情は阻止されることで、容易にこじれます。

ですから、あまのじゃく化したオトナに “ 正論 ” で立ち向かう行為は、

火に油を注ぐことになります。

抑制系がおろそかになっている高齢者なら、なおさらのこと。

行動や言動はますますひねくれ、溝は深まるばかりです。

 

棲家はあるものの、居場所を失った “ 老いびと ” は、冷たい目にさらされながら、

日々暮らしています。

家族はため息をつき、目をそむけ、語りかけることをせず、ときに爆発します。

 

毎日まいにち家のなかをめちゃめちゃにして ! と怒るのは、感情です。

とはいえ、暴力を振るってはいけないと、挙げかけた手を降ろさせるのは、理性です。

無償の愛を注いでくれた親を見捨てるわけにはいかぬ、

と判断するのは、倫理や規範です。

 

 

老いびとを施設に入れるのは、姥捨て山に置いてくる行為と同じ、

と悩んでいる人がいました。

お金の相談には乗るから、具体的なことはそちらでやってよ、

と兄弟から一任された人がいました。

多額の借金を抱えているから、親の面倒なんてムリムリ、

と電話を切られた人もいました。

 

一方、「 施設入所となって以来、あれほどきつく当たっていた父に、

いまはやさしく接することができる。ありがたい 」

といってくれた、ご家族がいました。

一定のクーリング期間を設けることで、お互いがうまくいくことは、よく経験するところです。

<< 認知症と就労者のあいだ   認知症をめぐって(その10)   すべての人を支配する “ 感情 ”   認知症をめぐって(その8) >>

お電話番号でのお問い合わせ 0465-64-1700 メールでのお問い合わせ

お問い合わせ・資料請求