浜辺の診療室から

話し相手がいない     老いびとのこころ(その3)

「地方新聞の広告欄に投稿して、一緒にトランプをしたり
コーヒーを飲んでおしゃべりしたりする友達を募集したことがありますが、
誰からも連絡がありませんでした」 
 
「試したのは、いくつかの新聞に友達を募集する広告を載せ、
問い合わせが来たらそれに返事を書くことでした。
しかし、期待していたような友人には巡り合うことができませんでした」  
 
ひとりになってしまったあと、やや時間が経ち、
このままではいけないと感じた老いびとは、
話ができる相手を探そうとする。
たとえば、かつての友人だったり、仕事仲間だったり、
仕事仲間のツテだったり。 
 
机の隅から出てきた古い名刺の連絡先に電話するのは、気が引ける。
相手がいまもそこにいる保証はない。
はて……と老いびとは考える。
そもそも、これはいつの名刺だったか。
それくらいなら新規の“友”を探せばいい――
ということで、老いびとは新聞に広告を打ったのだろう。 
 
しかし待てど暮らせど、連絡はこなかった。
老いびとは、広告が掲載された新聞を手に、思いをめぐらす。
記事は目にしたものの、連絡する気になれなかったのか、
それとも、怪しげな記事だと思われたか、
あるいは、新聞を取っている高齢者は、自分が思っているほどいないのか。 
 
そうしてまた、電話が鳴らない部屋で、
ひとり静かな時間を送ることになる。
ki4

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