浜辺の診療室から

あきらめの底で     老いびとのこころ(その7)

「家は、外壁も内壁も塗り替えが必要な状態なのですが、
塗料を買ってから一年以上たってしまいました。
庭は荒れてしまい、しっかり手をかけなければならない状態になりました。
エネルギーを消耗してしまい、何もできませんでした」 
 
「ベッドをきれいに整えなくても
それを期待している人がいないので、
まったく無頓着になりました」  
 
もういいかな、と思うときがある。
やらなくても、誰に叱られるわけでなし。
まして、命を取られるわけでなし。
やったところで、誰に褒められるわけでなし。
今日やれなかったら、明日やればいい。
明日やれないのなら、あさってにすればいい。
 

 何もしなくたって、腹はへる。
コンビニで買ってきたパンを食べ、
カップ麺に湯を注ぎながらワンカップを呑み、
満腹になって眠気に包まれれば、
これ以上幸せなことはない。 
 
満腹と少しの酔いは、
ひとりであることを忘れさせてくれる……。
老いびととは、経年劣化した人間のこと。
家も庭もベッドのシーツも、経年劣化するじゃないか。
経年劣化グループに、おいらという老人も入っている。
ただ、それだけのこと。
ki87/28

<< 生きる自由     老いびとのこころ(その8 終わり)   むなしい“孤食”     老いびとのこころ(その6) >>

お電話番号でのお問い合わせ 0465-64-1700 メールでのお問い合わせ

お問い合わせ・資料請求