浜辺の診療室から

死後の世界はない     死と向き合うこころ(その9)

宗教学者である岸本英夫さんは、
旧制高校時代は理科におり、大学で宗教学に切り替えたのだと、
脇本さんは語っている。(平成1226日 NHK教育テレビ「こころの時代」にて)
その岸本さんは、アメリカにいたとき悪性黒色腫という疾患を患い、
以後、10年におよぶ闘病生活を送ったあと、腫瘍が脳全体に広がって永眠された。 

宗教学者でありながら、
「肉体の崩壊とともに自分の意識も消滅するのであって、
死後の世界を信ずることは、自分の合理性が納得しない」と、
死後の世界を強く否定するすがたは、
岸本さんが書いた『死を見つめる心』(講談社版 1973年)に詳しい。  
 
人間には無ということは、考えられないのだということである。
人間が実際に経験して知っているのは、
自分が生きて生活しているということだけである。
人間の意識経験がまったくなくなってしまった状態というものは、
たとえ概念的には考えても、実感としては考えられないことである。
その考えられないことを人間は、死にむすびつけて、無理に考えようとする。
そこで、恐ろしいこととなるのではないか。 
 
私は、その絶望的な暗闇を、必死な気持ちで凝視しつづけた。
そうしているうちに、私は、一つのことに気がつき始めた。
れは、死というものは、実態ではないということである。
死を実態と考えるのは人間の錯覚である。
死というものは、そのものが実態ではなくて、
実態である生命がないところである、というだけのことである。
(『死を見つめる心』から)
 
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