浜辺の診療室から

静かなる まろやかな老い    本日休診その6

 日々の雑事に追われる者が吐く 十や二十のことばより
すぐれた詩人の声に耳を傾けたほうが
やすらぎになる
今回も詩人天野忠の詩を紹介する  

 
「伴侶」
せめて十坪ほどの庭と
廊下のある自分の持家に住みたい。
云い云いして
四十年……
 
ふっくらしたばあさんになって
入れ歯をはずして
気楽そうに寝ている。
ときどき
いびきをかいている。
 
 小さな借家の古い畳の上で。 
 

 「伴侶」
いい気分で
いつもより一寸長湯をしていたら
ばあさんが覗きに来た。 
 
――何んや?
――いいえ、何んにも
 
 まさかわしの裸を見に来たわけでもあるまい……。 
 
フッと思い出した。
二三日前の新聞に一人暮らしの老人が
風呂場で死んでいるのが
五日後に発見されたという記事。 
 
ふん
あれか。 

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