浜辺の診療室から

安全文化     本日休診その17

91日は防災の日。
制定の歴史は古く、1960年(昭和35年)にさかのぼります。
“災害”の定義は、
「自然現象や人為的な原因によって、人命や社会生活に被害が生じる事態」。
定義に従えば、医療事故も災害であることがわかります。
医療事故の件数が、年々増えています。
事故そのものも増えているのでしょうが、それとは別に、
きちんと報告する習慣が根づいてきたということでしょう。
 
 わたしたちの施設でも、事故に関する報告と、事後検討を重ねています。
幸いにして大きな事故はありませんが、
ヒューマンエラーによる事例が散見されます。
たとえば棚卸しをして院内薬局に備えてある薬剤量が合わなかったとき、
Aはなぜ10錠足りないのか、Bはどうして15錠多くあるのかを分析したら、
「……だと思い込んでいた」というパターンがありました。 
 
本来好ましくない行為が生じた(既遂)ときは「事故」として扱い、
手前で踏みとどまったものの実は危なかった! という未遂を
「ヒヤリ・ハット」として処理しています。
患者や従業員に実害が出なくても、既遂はす・べ・て「事故」として扱う――。
この点が、日本の医療・介護エリアで展開されている事故報告と異なっています。
別に当院が独自というわけではありません。
製造業を主体とした安全衛生活動の“線引き”に従っているまでです。 
 
 医療・介護・福祉業界で展開されている安全活動の多くは、
通常から外れた行為により “起きてしまったことの結果”を、
アクシデントとインシデントという2つに色分けしています。
結果があるレベルから上(重症)であれば事故(アクシデント)と呼び、
れより下(軽症)なら、未遂も含めてインシデントと呼んでいます。
既遂(した)と、未遂(していない)という行為による線引きではなく、
どの程度の不利益が生じたかという結果を考慮して分類している点が、
他業界の《線引き》と異なっています。
ちなみに医療・介護・福祉業界がいう「軽症(インシデント)」には、
「皮膚の縫合を含む簡単な処置や治療」や
「まちがったことを実施したが、患者には変化がなかった」などが含まれます。
 
 わたしたちが事故報告書の“標準”にこだわるのは、ひとえに
安全文化と取り組んできた歴史のちがいを
医療・介護・福祉業界と、その他の業界のあいだに認めるからです。
 
本気で再発防止に取り組むのであれば「結果」でなく、
「行為」に従った線引きが有効と考えるためでもあります。
同じような勘違いで、薬Aが患者1に、
また薬Bが患者2に投与されたとき、Aは胃腸薬だったから患者1はたいしたことなく、
Bは抗不整脈薬だったから患者2は大変なことになったという場合、
結果による線引きは、どれほど意味があるのでしょう。  
 
人は同じような過ちを繰り返し犯すのですから、
誰がしたかは問題になりません。
過ちがなぜ生じたかを分析すると、
そこには錯覚や思い込みが大抵あります。
行為の背後に潜んでいた心理を分析して
ヒューマンエラーを減らすことが事故の再発防止につながると
わたしたちは考えています。
gojyuunotou 五重の塔  下から見上げている? 上から見下ろしている?

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