ブログ
必察!!認知症の方のケア
介護が必要な高齢者の原因疾患の一つに認知症があります。
以前は痴呆症と呼ばれており「何もわからなくなる病気」とされていましたが、
今は「認知機能に障害が出る疾患」と考えが改まっています。
認知症介護は、家族にとっても介護職にとってもストレスとなりやすいものです。
その原因の一つは、認知症という疾患を正しく理解できていないこと…。
認知症の方は、今現在の目の前の世界がどのような世界であるかを正しく
認識できない状態なのです。そのことを私たちが理解せず、「現実はこう
いう世界だから…」と言ったところで認知症の方はそれを受け入れられる
はずはありません。結果、様々な周辺症状が出てしまい、私たち(介護する
側)にとって、問題行動と捉えてしまうのです…。
認知症の方をケアする上でやってはならないことは、本人の認識の違いを正すこと!!
認知症の方に見えている世界は、今見えている世界が本人にとっては正解の世界であり、
それを間違いだと指摘する人間は「話の通じない者、邪魔をしてくる者」といった風に
捉えられかねません。自分にとって不都合な人間とは接したくないのは人間誰しも同じ
です。つまり、私たちがいかに現実を認識してもらおうとしても、その行動が認知症の
方とのコミュニケーションを断絶してしまいかねないものだということを理解する必要
があります。
見えている世界を会話から想像し、その見えている世界を否定することなくケアすれば、
「話を分かってくれる人」と感じ、安心感を得ることができ、その安心感が情緒の安定
につながっていくのです。
暴言や徘徊、収集癖などの行動ではなく、その方の見えている世界、感じている不安、
迷い、怒りなど、その行動に至る感情に目を向けることが必要です。
まさしく、認知症のケアは必察(必ず察するの略)が不可欠なのです。
認知症の方が「子供が帰ってくる」「仕事に行かなくてはいけない」といって徘徊や
不安を言葉にされる方がいらっしゃいます。それらは「自身にとって役割を自覚でき
ていた頃」であり、いわば自身が社会生活の中での居場所を強く認識していた状態です。
なぜ自身がその頃に戻ってしまうかを考えると、現在の自分に何も役割がなく、自身の
社会的な存在意義を感じられないのかもしれません。
認知症の方を介護するにあたり、本人のできないことを理解しつつできることに着
目し、その役割を持ってもらうことで「あなたの存在は私たちに役に立っている」
という実感を本人に感じてもらうことができれば、認知症による周辺症状は穏やか
になる場合が多く見られます。
新型コロナウイルス禍による外出、面会等の自粛、社会とのつながりが減少し、生
活不活発病や認知症の進行が懸念されております。
そのような環境下であっても、特別なことをするのではなく、認知症を理解し正し
く関わること、日常生活の中での居場所や役割を持っていただけるようにケアする
ことで認知症の予防や進行予防につながっていきます。
新しい生活様式だからこそ、目の前にいるその方の今とこれからのために、その方に
思いを馳せ、必察(必ず察する)を意識して関わり続けることが、認知症のケアなのです。
1人ひとり違う世界を個性として捉えれば、認知症の介護を通して色々な世界を旅する
ことができます。そう思うと、どんな世界があるのだろう?ワクワクするのは私だけでしょうか?
みなさんも是非、その方の世界にお邪魔してみてください。きっとその方も受け入れて
くれるはずです。