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「今は元気。でも、この先が心配です。」 【施設長小野】
先日、施設に一本の電話がかかってきました。
電話の主は、高齢者男性。
「今はまだ元気に生活できているんですが…」
そう切り出された男性は、一人暮らしをされており、身寄りもほとんどいないとのことでした。
相談内容は、介護サービスの利用や施設入所ではありません。
「今は何とか生活できている。でも、もし自分が病気になったらどうなるんだろう。」
「入院したら誰が手続きをしてくれるのか。」
「認知症になったらどうしたらいいのか。」
そんな将来への不安を抱えておられました。
お話を伺うと、特別な困りごとが起きているわけではありません。
むしろ、とてもしっかりされていて、ご自身のことは自分でできる方でした。
だからこそ、「元気な今のうちに相談しておきたい」と思われたそうです。
電話越しにお話を伺う中で、少しずつ緊張がほぐれ、「話を聞いてもらえて良かった」という言葉が…。

同時に、もし、この方が相談先を見つけられなかったら…。
きっと不安や悩みを一人で抱え続けていたのではないだろうか、と。
実は、このような状況は決して特別なことではありません。
令和8年版高齢社会白書では、国際比較調査の中で、
日本の高齢者は「近所の人」や「友人」を頼れる相手として挙げる割合が低いことが報告されています。
また、「近所付き合いがない」と回答した高齢者も少なくありません。
便利で豊かな時代になった一方で、人と人とのつながりは少しずつ薄れてきているのかもしれません。
地域の方々と関わる中で感じているのは、「困っている人がいない」のではなく、「困っていても相談できない人がいる」という現実です。
高齢になっても元気に暮らしている方が多い一方で、
「子どもに迷惑をかけたくない」
「近所に相談するほどではない」
「こんなことで相談していいのだろうか」
そんな思いから、一人で悩みを抱え込んでいる方も少なくありませんでした。
家族の形が変わり、一人暮らしの高齢者が増える中で、「何かあったときに頼れる人がいない」
という不安は、今後さらに大きな社会課題になるかもしれません。
今回の電話相談も、まさにその課題を象徴する出来事だったように思います。
介護の問題は、ある日突然始まります。
認知症も、介護も、家族だけで抱え込むには大きな課題です。
だからこそ大切なのは、「困ったときに相談できる場所」と「気にかけてくれる人」の存在。
私たちは、介護サービスを提供する施設であると同時に、地域の皆さまが安心して相談できる地域でありたいと考えています。
認知症のこと。
介護のこと。
ご家族のこと。
今すぐ介護サービスが必要でなくても構いません。
誰かに話を聞いてもらうだけで、気持ちが軽くなることもあります。
私たちは介護が必要になった方を支えるだけでなく、地域で暮らす皆さまの不安や悩みに耳を傾ける存在でありたいと考えています。
一本の電話相談から改めて感じたのは、「相談できる場所があること」の大切さでした。
これからも地域の皆さまにとって身近で頼れる施設であり続けられるよう努めてまいります。
