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認知症について【施設長 小野】
こんにちは。無計画のブログ更新。今回は認知症介護について少し…。
認知症の中核症状の1つとして【記憶障害】があることの理解は、介護・医療の専門職なら誰でも知っている知識であり、今では一般の方々にも広く知られています。
介護業界で働く皆さん、その知識 = 介護実践 につながっていますか?
例えばこんな場面…
「ご飯を食べてない。」と言う高齢者に対して「食べましたよ。覚えてないんですか?」
久しぶりのサービス利用された方に対して、挨拶代わりに「おはようございます。私の
こと覚えていますか?」
など、認知症の方を試すような声掛けしていませんか?
その声掛け一つで、認知症の方を傷つけてしまう場合があるんですよ。
思い当たる方は、すぐにその声掛けはやめて、認知症の記憶障害についてもう一度学び直してほしいのです。
認知症を患われたほとんどの方が、脳の海馬(見たり、聞いたりしたことをいったん貯めて、記憶として信号を送り出す器官)周辺に血流障害が生じ、その機能が働かないために、新しい出来事を覚えられない、思い出せないのです。
覚えていられないのは、忘れてしまうのではなく記憶にならないから…。
覚えていられないのは、認知症の方の性格とか努力などは何も関係はありません。
それが、認知症という病気です。
記憶障害の程度が、認知症の方々の存在価値を左右することもないのに、記憶を促したり、記憶力を試そうとしても、何一つもよいことはないはずです。
認知症の方からしてみれば、「いったい、何を言っているんだ。」「誰か分からない人が気安く人を馬鹿にして」と気分を害し、混乱を生じさせ、様々な行動・心理症状を引き出すきっかけにしかなりません。不適切な声掛けはやめましょう。
また、海馬を通さない記憶があることも知られています。仕事の手順などの手続き記憶や自分にとって良い人、悪い人といった感情記憶です。
手続き記憶や感情記憶は、海馬を介さず小脳に残たるため、認知症の方でも晩期まで残る記憶と言われています。
記憶障害がある = 何も分からない ではないのです。
私たちが丁寧な言葉で、目を見て笑顔で話しかけ続ける姿勢が、「この人は自分にとって良い人だ。」と感情記憶に残り、そのかけた時間と愛情は信頼として、“貯金”のように貯まっていくのです。私たちは認知症の方々に心を見られている。愛情は目には見えないけど、心のやさしさは認知症の方に必ず伝わるし、記憶として残ります。
認知症とはどういう病気で、どんな症状なのか、記憶障害とはどのように生ずるのかという基礎知識を身に着けて、人に対する興味と人に寄せる人間愛を盛り込んで、温かな手を知識の上にのせて差し伸べてることが、介護のプロとしてのスタンダードなのです。